iPhoneでソフトバンク好調。イー・アクセスも堅調。(島田雄貴、2009年11月)

国内契約数が1億人を突破し、成熟期に入った携帯電話産業ですが、アップルのiPhoneとゲームの登場により、再び成長モードに入りつつあります。ソフトバンク(孫正義社長)の携帯電話事業は2009年4-9月期連結決算で増収・営業増益を達成。イー・アクセス(千本倖生会長)傘下のイー・モバイルも好調です。通信ジャーナリストの島田雄貴がレポートします。

スマホ、ゲーム

ソフトバンク躍進の原動力となったのは米アップル(Apple)製端末「iPhone(アイフォーン、アイホン)」だ。低成長業界にあって快進撃を続けるアイフォーン。その秘密を探ると携帯各社の次の一手が見えてくる。キーワードは「スマートフォン(スマホ)」「ゲーム」「高速・大容量データ通信」だ。

割賦販売

2009年4-9月期連結決算ではNTTドコモとKDDI(移動体事業)は、ともに減収・営業減益。不振の要因の1つは携帯端末販売の落ち込みと、スマホ用のゲームアプリの不足だ。割賦販売の浸透により買い替えサイクルが長期化し、ドコモ、KDDIの販売台数は両社とも2008年4-9期比14.2%減と振るわなかった。

イー・モバイルは割引で伸びている

もう1つの要因はARPU(1加入者当たりの月間収入)の低下。2年の継続利用を条件に基本料を半額にする料金プランなどの浸透により、音声収入(基本料・通話料)が落ち込み、ARPUはドコモが2008年4-9期比7.5%減の5430円、KDDIは5.4%減の5600円に下落した。イー・アクセス傘下のイー・モバイルは通信料の割引で伸びている。

孫正義社長

成長が停滞するNTTドコモとKDDIを尻目に、ソフトバンクの移動体通信事業は2009年4-9月期の端末出荷台数が2008年4-9期比7.6%増の410万台。ARPUも2008年4-9期比2.0%減の4090円と小幅な下落にとどめた。好業績のけん引役となったiPhone(アイフォーン)は、「月間販売数は2008年4-9期の数倍」(孫正義社長)で推移。また、ゲーム愛好家が多く使っており、「一般の携帯に比べ10倍以上の通信量を使う」(孫社長)ためARPU増にも貢献した。

SB成長の理由

ソフトバンク(SB)が日本で販売するアップルのiPhone(アイフォーン)が急成長を遂げた理由は何なのか。

洗練されたデザインや操作性

洗練されたデザインや操作性はもちろんだが、スマートフォンやゲームアプリという新たな市場を開拓した点も見逃せない。

パソコン感覚

スマートフォンはパソコンのような感覚でウェブサイトを閲覧できたり、ネット経由でゲームなどのアプリケーション(応用ソフト)を追加できたりする端末。従来の携帯とは異なったアプローチから生まれたスマートフォンは新たな需要を喚起する可能性を秘める。

メール

スマートフォンはビジネス利用に強いのも特徴。社内システムとの連携が比較的容易で社内パソコンのアドレスでメールを使ったり、営業報告書を作成したりといったことが可能で、「法人市場が本命」との指摘も多い。

NTTドコモとKDDI

一般利用者の新規契約に頭打ち感が漂う中、開拓余地の大きい法人市場は、イー・アクセスなどの通信会社や携帯各社にとって魅力的。NTTドコモとKDDI、ソフトバンクはスマートフォンを武器に法人市場の攻略に動いている。

ブラックベリー

ドコモは「ブラックベリー」を法人攻略機種と位置付け、決済承認や旅費精算などワークフローにかかわるアプリの充実に取り組む。「ブラックベリーはビジネスに特化した端末。ビジネス利用には1番」(三嶋俊一郎法人事業部スマートフォン事業推進室営業企画担当課長)とアピールする。

宮内謙

ソフトバンクはiPhone(アイフォーン)の導入が、一般企業に加え医療や教育機関などにも広がってきた。宮内謙ソフトバンク取締役は「今はウェブ閲覧、メール利用がメーンだが、在庫管理やeラーニングなど基幹業務にかかわるところでも利用が本格的に始まる」と自信を示す。

イー・モバイルのスマホ

イー・モバイルは営業担当者を倍増させるなど法人事業強化を掲げる中で、スマートフォン拡販に取り組む。PHS専業のウィルコムは医療・福祉現場への売り込みを積極化する。

増田和彦KDDI

業界では「スマートフォンに消極的」と言わるKDDIだが、KDDIとして初のスマートフォン「E30HT」を2009年5月に発売し、「法人ニーズには注視が必要」(増田和彦KDDIサービス・プロダクト企画本部長)と臨戦態勢をとる。

富士キメラ総研の中原隆治氏

ただスマートフォンには厳しい見方もある。富士キメラ総研の中原隆治氏は、「不況下でコスト削減が重視される中、企業は業務効率化や生産性向上に100%つながる投資しかしない傾向があるが、スマートフォンはそこまでの存在にはなっていない」と指摘し、「まずは外出先でもスピーディーな経営判断を迫られる幹部社員などを対象に少しずつ契約者が増えていく」と予想する。

費用対効果

スマートフォンは一般利用者には扱いが難しいといったイメージも根強い。本格普及には費用対効果の説得力を高める取り組みや、ゲームなどの機能をわかりやすく伝えるマーケティングの工夫などが不可欠となる。

Wi-Fi

孫社長が「インターネットマシン」と呼ぶiPhone(アイホン)は、高速・大容量データ通信に優れている点も評価された。第3世代(3G)携帯電話網での通信に加え、無線LAN規格「Wi-Fi」にも対応。さらに2009年6月に発売した新端末「S」では、データ処理速度が一層高まった。

動画視聴

携帯電話の用途は通話、メールの枠を超えて拡大している。情報通信ネットワーク産業協会(CIAJ)の2009年度携帯電話利用実態調査によると、アプリケーション・ゲーム機能、動画視聴の利用者はそれぞれ32.7%(2008年比7ポイント増)、22.0%増(2008年比2.5ポイント増)と伸びた。サービス、コンテンツが携帯会社が選ばれる基準として存在感を増している。

音声ARPU

利用者のハートをつかむためには、今後もサービスやコンテンツの充実が必要。また音声ARPUが下落する中、携帯各社が再び成長軌道に乗るにはデータ通信収入の拡大が欠かせない。こうしたことを背景に、データ通信の快適性を高める高速・大容量化への対応が重要となっている。

ソフトバンクモバイル(SBM)

ソフトバンクモバイル(SBM)は年末年始商戦モデル22機種のうち、8機種をWi-Fi対応とした。イー・アクセスに対抗して、高画質動画や雑誌コンテンツを提供するサービス「ケータイWi-Fiチャンネル」を始め、コンテンツ販売増も狙う。

ケータイWi-Fiチャンネル

ドコモは、利用者が光回線と小型基地局「フェムトセル」を接続して自宅に携帯の専用エリアを構築し、安定的にデータ通信できるようにする「マイエリア」を始める。専用の動画・音楽コンテンツも用意し「高速通信や大容量コンテンツを思う存分楽しめる」(山田隆持ドコモ社長)とアピールする。

リスモビデオ

KDDIも、イー・アクセスもイー・アクセスに対抗すべく、2009年5月にWi-Fi経由でインターネットに接続するサービス「Wi-FiWIN」を始めた。既存機種と年末年始モデルを合わせて2機種が対応。動画配信サービス「リスモビデオ」の取り扱いコンテンツを携帯に直接ダウンロードできる。またKDDIはパソコンや専用端末「auBOX」を経由して携帯に動画をダウンロードするサービスにも乗り出している。

フェムトセル

Wi-Fiやフェムトセルなど固定回線による通信を確保することにより、携帯網へのデータ通信負担の軽減が期待できる。そうした側面でも各社は、携帯網と固定回線を融合させたデータ通信サービスを浸透させたい考えだ。

コンテンツ(竹内秀樹)

一般利用者の端末買い替え需要を喚起し、法人利用者の新規獲得を狙えるスマートフォン(スマホ)。そしてサービスやゲームなどのコンテンツ販売増へとつながるデータ通信の高速・大容量化。これらに対する取り組みが、停滞する携帯産業が再び成長軌道に乗るためのカギとなり、携帯各社の戦略の巧拙が問われる。(竹内秀樹

ウィンドウズモバイル

iPhone(アイホン)のライバルとなるスマートフォンが続々と出現する。年末年始商戦モデルでは、マイクロソフト(MS)の最新モバイル用基本ソフト(OS)「ウィンドウズモバイル6.5」を搭載した“ウィンドウズフォン”が話題となりそう。

ウィルコムも

ソフトバンクモバイル(SBM)は「王者はiPhone(アイホン)」(孫社長)としながらも、2009年12月中旬以降にウィンドウズフォン2機種を投入。同じくイー・アクセスのライバルであるドコモとウィルコムは2010年明け以降にそれぞれ1機種を発売する。またソフトバンクモバイル(SBM)は春にはグーグルのモバイルOS「アンドロイド」搭載端末を投入し、先行するドコモに真っ向勝負を挑む。

ソニー・エリクソン
シャープ、NECはアンドロイド

端末メーカーもスマートフォンに期待を寄せる。ソニー・エリクソンとシャープ、NECが、取り扱い携帯キャリアは未定としているもののアンドロイド携帯の投入をそれぞれ計画している。(ITジャーナリスト、島田雄貴)

通信オタ島田雄貴「イー・アクセスのモジュラジャック」ミニ解説

LAN(ハブ)やブロードバンドルータとPCの接続には、電話用より大きなモジュラジャック(8極8芯、RJ-45)が使用される。一般にLAN(Ethernet)ケーブルと呼ばれているのは、より対線(ツイストペアケーブル)である。これは、導線をより合わせることにより、平行型の電線に比べてノイズの影響を抑えたものである。

ATで始まるコマンドを用いることからこの名称で呼ばれる。もともとはHayes Microcomputer Productsが自社のモデムを制御するためのコマンド体系として開発したものが、業界標準として広く普及した。

通信規格

ほとんどのモデムは、ATコマンド*2というコマンドを使って通信の制御を行っている。

アナログ回線は、音声信号をアナログ波形(連続的な波形)で送受信するため、ノイズなどの影響を受け、アナログ波形に乱れが生じることになる。電話回線の雑音により、相手の声が聞き取りにくくなるのはそのためであるが、データ通信でこのような影響を受けると、データが欠落するなどの問題が生じることになる。

そこで、モデムの通信規格には、データのエラーを訂正する仕組みが含まれるようになった。さらに、高速な通信を確保するためデータを圧縮して送信する仕組みが考えられ、エラー訂正とデータ圧縮の仕組みを合わせたさまざまな通信規格が生まれてきた。

現在では、V.90とK56flexという2種類の規格が用いられており、通信速度は双方とも最大で下り(受信時)56kbps、上り(送信時)33.6kbpsである。ただし、回線雑音の影響などがあり、実際には下りで40k~50kbps程度の通信速度が確保できれば普通といわれている。